タイルには様々な種類があることはご存じの方も多いと思います。
種類の多さは選べるバリエーションが豊富であると共に使用する目的や場所に応じた「適材適所」の選択が重要になります。
より良い選択をして頂けるように。今回のタイル研究室では「タイルの種類」を製法や区分等、様々な角度からご紹介していきたいと思います。タイルを選ぶ際に是非お役立てください。
①タイル表面の釉薬(うわぐすり)の有無による区分 施釉タイルと無釉タイル
タイル表面に釉薬(*うわぐすりのこと)が施してあるものを「施釉タイル」、施していないものを「無釉タイル」と呼びます。
最も分かり易い違いはタイル表面の色と素地の色が一緒であるかどうかということです。
「施釉」は釉薬の調合によって比較的自由な加飾が出来ますが、「無釉」はその意匠に原料の土そのものの色の影響が強く出ます。
一方で無釉タイルの長所としてはタイル表面に欠けが生じたとしても表面と共色である為に目立ちにくく意匠に影響を及ぼしにくいという点が挙げられます。
「釉薬」にも様々な種類があります。
透明釉やマット釉、結晶釉、ラスター釉など多くの種類がありますがタイルの面状との相性や釉薬の「かけ方」によっても出来上がるタイルは全く違った表情になります。
「施釉」か「無釉」どちらを選べばいいかは目的によって異なりますが、意匠だけではなく性能も含めたそれぞれの特徴を活かすことが最良の選択になります。
②主な用途による区分 JISによる区分
内装壁タイル | 100㎜角、100㎜角二丁、150㎜角、200㎜角、 300㎜角など様々な形状・サイズのものがある。 |
内装壁モザイクタイル | 10㎜角、15㎜角、20㎜角、50㎜角などの他、 丸モザイク、六角形、変形モザイク、割りタイルなど |
内装床タイル | 100㎜角程度のものから、600㎜を超える大形のものまである。 |
内装床モザイクタイル | 内装床タイルの中で50㎜角以下のサイズのものは 内装床モザイクに区分され、ユニット化して施工される。 |
外装壁タイル | 小口平、二丁掛が代表的な形状であるが、 これらは積みレンガのサイズに由来している。 |
外装壁モザイクタイル | 形状は50㎜角、50㎜角二丁が主流で、 生産量のほとんどがマンションなどの外壁に使用されている。 施工効率を高めるために、紙張りなどのユニットで使用されている。 |
外装床タイル | 100㎜角程度のものから、600㎜角を超える大形のものまである。 雨水による滑り防止を考慮して、ラフな面状のタイルが用いられる。 |
外装床モザイクタイル | 外装床タイルの中で50㎜角以下のサイズのものは 外装床モザイクに区分され、ユニット化して施工される。 |
表には代表的な形状が記載されてはいますが実際はこれらの中にさらに多くの形状があります。
例えば「ボーダータイル」は外装壁タイルの区分に入りますが、様々なサイズのものがあり内装壁に使用されることもあります。
但し内装壁タイルの中には吸水率等の問題から屋外で使用出来ないものもありますので、必ずカタログやWEBサイトで使用可能部位をご確認ください。
③成形方法による区分 湿式製法と乾式製法
▮湿式製法とは
含水率の高い素地原料を、押出成形機によって板状に押し出し所定の形状・寸法に切断して成形する製法。
▮乾式製法とは
微粉砕された含水率の低い素地原料を、高圧プレス成形機で所定の形状・寸法に成形する製法。
湿式製法で作られたタイルは基本的には使用する原料の特性から「Ⅱ類(せっ器質)・無釉」の製品が多く見られ、「土もの」の色合いと押出成形ならではのラフで柔らかいエッジが、焼き物の風合いや重厚感を感じさせます。
また面状も立体的に成形することが出来るので、形状の自由度が高いのも特徴です。
乾式製法のタイルには「Ⅰ類(磁器質)・施釉」の製品が多いのですが、最近では金型や加飾方法の工夫により湿式製法タイルに近い雰囲気を感じさせる製品も多く見られます。
面状にもよりますが、湿式タイルと比較してタイル厚を薄く制作することが出来る点が特徴の一つでもあります。
④吸水率による区分 2008年のJIS改正に伴い測定方法が変更
【新】JIS A 5209 (2020) | 吸水率(%) | 【旧】JIS A 5209 (1994) | 吸水率(%) |
---|---|---|---|
Ⅰ類 | 3.0以下 | 磁器質 | 1.0以下 |
Ⅱ類 | 10.0以下 | せっ器質 | 5.0以下 |
Ⅲ類 | 50.0以下 | 陶器質 | 22.0以下 |
2008年のJIS改正によって測定方法が「自然吸水」から「強制吸水」(煮沸法または真空法)へ変更され、磁器質、せっ器質等の呼び名からⅠ~Ⅲ類という呼び名に変わりました。
したがってこの区分が外装への使用の可否や耐凍害性の有無の判断基準とはならなくなりました。
(耐凍害試験はJIS A 1509‐9による)
耐凍害性試験は、
・最初に常温の清水中で自然吸水させたタイルを、凍結融解試験装置内にタテ置きし、試験槽内において気中凍結・気中融解を100回繰り返します。
・1サイクルの所要時間は100分とし、冷却80分:‐20℃・融解(散水)20分:10~30℃とします。
・凍害を受ける恐れのある場所に使用するタイルに適用されます。
タイルを選ぶ際、意匠的な面では物件のコンセプトや関係者の方々の好みも大きな決め手になると思われますが、物性値や施工条件に合ったタイル選びという点においては施工自体の可否や外部での使用の可否等、法律や安全性に基づいた選択が必要となります。
色や面状は気に入ったが吸水率が高いので外部で使用出来ないといったケースがあるかもしれません。最適なタイルを選ぶためにご参考にして頂ければと思います。
今回はタイルの種類や区分を組成や形状の視点で見ていきましたが、釉薬の種類や原料の違いなど、より
細かい種類分けをすることもできます。
今後機会がありましたらご紹介させて頂きます。