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大谷石とは?その特徴と大谷石風タイルのご紹介

タイル研究室

こんにちは。ダントータイルのタイル研究室です。
今回の記事では天然石である大谷石の特徴と、当社で今年5月に販売を開始した大谷石風タイルについてご紹介していきたいと思います。

大谷石とは?

大谷石は栃木県宇都宮市の大谷町で採掘される軽石凝灰岩の石材です。
江戸時代から採掘され、建築資材として広く使われてきました。
特に耐火性や防湿性に優れており、住宅、蔵、石垣、墓石など幅広い用途で利用されています。
また、大谷石は美しい風合いと独特の斑点模様を持ち、近代日本の都市づくりにも貢献しました。

一躍大谷石を全国に広める大きな役割を果たしたのは、なんといっても大正時代に建造された、旧帝国ホテルです。
このホテルは後の関東大震災にも焼け残り、その優美さは設計者 フランク・ロイド・ライト氏の傑作といわれました。
使用された大谷石とスクラッチ練瓦とテラコッタと大谷石の彫刻の絶妙な組み合わせは、大谷石の特徴である素朴で柔らかく温かみのある質感が遺憾なく発揮され、ブームとなりました。

カトリック松が峰教会は、栃木県宇都宮市にあるキリスト教の教会およびその聖堂です。
スイス人の建築家マックス・ヒンデルによって設計され、1932(昭和7)年に竣工。
日本では数少ない双塔を持った教会建築となっています。
2階にある聖堂の内外壁に用いられている大谷石は、旧帝国ホテルに用いられた場所と同じ大谷の採石場から切り出されたものに、石工職人によりさまざまな意匠が施されています。
大谷石建築としては現存最大級のロマネスク・リヴァイヴァル建築であり、1998年に国の登録有形文化財に登録されました。

大谷石の構成鉱物は、浮石質ガラス・斜長石・石英を主とし、少量の黒雲母角閃岩輝石、珪酸、第二酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、石灰、酸化マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどを含んでいます。
日本列島の大半がまだ海中にあった新生代第三紀中新世の前半に、火山が噴火して噴出した火山灰や砂礫が海水中に沈殿して、それが凝固してできたものと言われています。

大谷町付近の大谷石の分布は、東西4キロメートル、南北6キロメートルにわたります。
大谷石の埋蔵量は約6億トンと推定されています。

最盛期の昭和40年代には約120か所の採石場が稼働しましたが、現在、5箇所の採掘箇所で採掘が行われており、年間約1万トン程度が出荷されています。
一部で露天掘りも行われていますが、地下数10メートルから100メートルを超える地下で切り出す坑内掘りが多いとのことです。

栃木県には大谷石と類似の石材が多数分布し、それぞれ産地の名を取って長岡石、深岩石、岩舟石、茂木石などと呼ばれています。

大谷石は採掘している場所によって石目が変わり、細目(さいめ)・中目(ちゅうめ)・荒目/粗目(あらめ)に分類されます。
どの様に分類しているかというと、後述の「ミソ」の大きさで呼び方が変わり、ミソが小さい石は細目、ミソが大きい石は荒目、中間もしくはミソが大きいものと小さいものが混ざっているのが中目です。

大谷石の特徴とメリット、デメリット

続いて大谷石の特徴とメリット、デメリットを説明します。

大谷石の特徴

ミソと呼ばれる模様

大谷石の特徴といえば、何といってもそれぞれの石に表情豊かに見られる「ミソ」と呼ばれる穴です。
大谷石はおよそ1200万年前にできた凝灰岩で、そこに黒っぽい木の破片などの不純物などでできたものがミソになります。
自然が作ったミソには同じものが2つと存在しません。

天然のゼオライトを含有

天然ゼオライトの多孔質構造は、温度・湿度を一定に保つ調温・調湿効果があります。
大谷石の空間は、夏は涼しく、冬は暖かく快適です。

柔らかく高い加工性

加工性が高く、インテリア雑貨や内装材として広く使われています。
加工性が高いため、表面の仕上げもダイヤ挽き、ビシャン、チェーン挽き、コブだし、リブ、割肌など様々な種類があります。

優れた耐火性

火に強く、1000℃以上の熱にも耐えられるため、かまどやピザを焼く窯の構造材としても利用されます。遠赤外線がおいしさを増幅させます。

大谷石のメリット

熟成効果

大谷石のゼオライト成分と遠赤外線による熟成効果により、腐敗の進行やカビ発生の抑制をし、鮮度を保ちながら熟成を進ませます。
大谷石の地下空間で熟成された生ハムは、人為的に作られた施設での熟成に比べ、 肉の旨味成分である遊離グルタミン酸が多く検出されています。

音響効果

多孔質構造がコンクリートやガラスに比べ高い吸音率を有しています。
吸音効果を発揮し、優れた音響性能を発揮します。レコーディングスタジオやコンサート会場にも使用されています。
一般住宅ではシアタールーム、オーディオルーム、リビングのテレビボードの後ろの壁などで使用すると効果が発揮されます。

消臭効果

ゼオライトの多孔質構造により、ガスや水の吸着効果も高いので消臭効果があります。
珪藻土と比べてもホルムアルデヒドの除去能力が2倍以上という試験結果もあり、シックハウス症候群対策にもなりそうです。

調湿効果

多孔質構造は調湿効果にも優れています。
水の吸着能力が高いため部屋の中の湿度を吸着し、吸着した水分で乾燥を防ぐことができます。
珪藻土と比べて倍以上の吸湿能力があり、大谷石製のコースターも販売されています。

大谷石のデメリット

屋外での経年劣化

屋外での劣化には注意が必要です。
大谷石は柔らかく加工しやすい特徴がありますが、柔らかいがために劣化が早いのです。
屋外に使用すると、雨風によって浸食が進み表面が剥がれてくることもあります。
ミソ部分は特に柔らかく、ボロボロと剥がれ空洞になる場合も。
また、水の吸着能力が高いことで雨が石に入り込みカビが生える原因となります。

経年による変色

大谷石は、採掘されて間もない状態では水分を多く含み青緑色で、ある程度乾燥が進んだ状態では白っぽく変化し、色の変化が進んだ状態では鉄分が反応し茶色く変化します。
大谷石には色の種類があるのではなく、含まれる鉄分やカルシウムが大気中の汚れに反応し変色しているのです。
変色は大谷石に含まれる鉄分やカルシウムの量が関係しており、白っぽい状態で落ち着く場合もあれば、もっと赤茶っぽく変化する場合もあります。
変色を楽しむ場合は良いですが、最初のイメージを変えたくない場合にはデメリットとなります。

大谷石風タイル“porous(ポラス)”のご紹介

上記で述べたように、大谷石は有名建築にも使われ、様々な優れた効果を持った、日本の誇る素晴らしい石です。
しかし、屋外で使用する際は変色だけでなく、表面が剥がれてしまうことがあるなど、建築資材としての機能が損なわれるという一面があるのも事実です。

そこで、大谷石の素朴であたたかみを感じさせる独特の風合いを、経年変化が少ないタイルでデザインできないか、というコンセプトで開発されたのが、今年5月に発売された大谷石風タイル“porous(ポラス)”です。

サイズは300x 150角、300×100角、300×50角の3つの長方形形状で、11 mm厚と17 mm厚の2種類の厚みをご用意しています。
材質はJISの規格である磁器質(Ⅰ類)に準じており、吸水率が低く接着剤・モルタルどちらの施工方法でも可能です。
価格は、当社で販売している天然の大谷石と比較すると4割程度です。

使用部位は屋内壁用、屋外壁用となり、床には対応しておりませんのでご了承ください。

*詳細情報はこちらのページをご確認ください。porousの製品一覧

大谷石の特徴であるミソは、線香の端材を原料に混ぜることにより再現しました。
この線香の端材は、線香の一大産地である淡路島で1893年創業した老舗メーカーである株式会社薫寿堂様から、廃棄予定の端材を提供していただいています。
同じ淡路島で1885年に創業した当社とのコラボレーションです。

その他にも、廃棄物や下水汚泥の焼却灰等を1300 ℃以上の高温で溶融したものを冷却し固化させた溶融スラグや、採石・窯業廃土類30%のリサイクル原料を使用したサステナブルな商品です。

この“porous”と、蛍光管廃ガラス100%のガラスタイル“AKT あかつき”を組み合わせたパターンは、落ち着いた大谷石の質感とガラスのきらめきがアクセントとなり、自然な中に有機的な印象を与えます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。
今回は大谷石の特徴と、当社の大谷石風タイル“porous”についてご案内いたしました。

大谷石は経年により変化する、侘び寂びのある日本的で素晴らしい石材です。
ただし、建築資材という側面から見た場合、屋外での使用が難しくなるケースもあると思います。

そこで、品質的に安定しているタイルという選択肢を持つことで、多様なニーズに応えていくことができるのではないかと考えています。
お客様にはそれぞれの建材の特性を理解した上で、建材を選定していただければ幸いです。


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