こんにちは。ダントータイルのタイル研究室です。
タイルには様々な形状がありますが、今回はタイルの役物についてお話しします。
タイルの役物とは?
『役物』は建築の世界では割とよく聞く言葉ですが、一般の方々はあまりなじみのない言葉かもしれません。
調べてみたところ広辞苑や大辞林には『役物』という言葉は載っていないようです・・・。
役物タイルとは、出隅(角の出っ張った部分)や階段の端などに使う特殊な形状のタイルを指します。
平物タイルでも端に貼れないことはないのですが、特に施釉品などは色の違うコバ面(側面)が見えてしまい、見た目が良くありません。
内装などは役物タイルの代わりに見切り材を使って納める方法もありますが、タイルと見切り材の材質が異なるため均一感は失われてしまいます。
タイル面をよりきれいに仕上げるために、役物タイルは用意されています。
一部の役物タイルは平物タイルから接着加工で作ることもできますが、今回は成型品の役物タイルをご紹介していきます。
内装タイルの役物
内装タイルは施釉品が多いため、表面とコバ面の色が違うと特に目立ちます。
そこで角が丸く釉薬が掛かっている面取りタイルというものがあります。
一辺が面取りされているものを片面取りタイル、二辺が面取りされているものを両面取りタイルと呼びます。
カウンターにタイルを貼る際など、天板端の部分に片面取りを貼って、角の部分を両面取りで仕上げれば、コバの素地も見えずきれいに納まります。
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丸みのある『竹割』と『三角出隅』という役物を使った納め方もあります。
今では製造しているメーカーもかなり少なく、ほとんど見かける事はなくなりましたが、丸みがあって可愛い印象です。
ちなみに乾式製法のタイルでは、曲がった形状を作ることはとても難しく、特別な技術が必要となります。
その他には、タイルの端が内側に曲がっている幅木タイルもあります。
床に接地する一番下の部分が折れ曲がっていることにより、きれいに壁と床の境目が納まります。
こちらも最近あまり見ることはなくなりました。
後ほど床タイルのところでもご紹介します。
外壁タイルの役物
壁面のコーナー部分に使われるのが曲りです。
寸法の違いから標準曲り、大曲り、小口曲りなど色々な種類があります。
二丁掛けタイルで言うと、標準曲りのサイズは長辺168mm・折り返し50mm、大曲りは長辺227mm・折り返し50mmとなります。
小口曲りは長辺108mm・折り返し50mmで、小口サイズ(108x60mm)の平物タイルのコーナー部分に使用する曲りです。
梁や開口部の角の部分に使うL字型の役物を、屛風曲りと言います。
立てて見ると屏風の形をしていることからその様に呼ばれますが、別名“まぐさ”とも呼ばれています。
曲り同様、平物タイルのサイズごとに用意されており、二丁屏風曲り(2Tビ)、小口屏風曲り(コグチビ)などがあります。
最近は二丁掛けの一体役物を製造するメーカーは減っています。
フラット面はまだ見かける事もあるのですが、テッセラ面、ハツリ面の一体役物は、タイル関係者でも見る機会が少ない役物です。
※上記の一体役物は弊社のノーバ陶爛シリーズで対応可能です。
ちなみに、二丁掛けは元々レンガの長手面の寸法を基準としてつくられたサイズです。
レンガの基本的な積み方である「長手積」の馬目地を踏襲して、出隅を中心に標準曲りを互い違いに貼っていくことで馬目地の仕上がりになります。
タイルの曲りをレンガと同じサイズで長辺227mm・折り返し108mmにした場合、12mm厚のタイルで1個約500gとかなり重くなります。
また、役物はサイズが大きくなるとねじれが生じやすくなり、施工時の接着面積が減少し剝離の原因となるため、寸法誤差が小さくなるよう、小さい形状にしておいた方が無難です。
下の画像は、当社協力工場の特殊役物で、“アール曲り”です。
なんと文字通りアール状に曲がっています!
分かりにくいので製品図面でご紹介すると・・・、
このような形状です。
コーナー部分に使用する役物ですが、当然下地も丸く作らなければなりません。
以前某店舗専用に特注で生産していた役物ですが、乾式プレスで生産しておりかなりの高度な技術を要します。かなりマニアックな役物です。
床タイルの役物
文字通り、階段部分の踏み面の端に張るための役物として、階段タイルというものがあります。
タイルの端に凹凸の筋がついており、凹凸の付いている一辺は(内装の片面取りのように)面が取ってあるものを平階段、それにL字の折り返しが付いているものをタレ付き階段と呼びます。
コーナー部分用には、二辺に凹凸の筋が入っている階段コーナーと呼ばれるものがあります。
階段タイルの端部に凹凸が付いていることで、滑り止め効果に加えて触覚性と視覚性を高める効果があり、転倒の危険性を軽減します。
更に、階段タイルの色と平物タイルの色を、コントラストの大きな組み合わせに変えることで、視覚性が上がり、安全性は高まります。
続いて幅木タイルをご紹介します。
先ほど内装タイルのところでも少し触れましたが、床面のタイル貼りから壁面の立ち上がりの幅木部分に使用するタイルです。
通常の平物タイルを貼ることも可能ですが、幅木タイルは下側が内側に曲がっているため入隅に目地部分がなくなり、汚れが溜まりにくくなります。
特に、飲食店などの施設厨房床はデッキブラシで掃除する機会が多いと思いますが、水に強いタイルの幅木を使っていれば安心です。
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まとめ
いかでしたでしょうか。ちなみに海外品には役物タイルがあまり用意されていません。
役物は隅々までこだわる日本人の繊細な感覚が創り出した商品と言えるでしょう。
国産タイルは今でも一体役物がラインナップされている商品がありますので、タイルをお選びいただく際には、役物も含めてご検討いただければと思います。