兵庫県・淡路島の漁師たちが着ていた「どんざ」。
今回のタイル研究室では、この「どんざ」や「刺し子の模様」と共に、「どんざ」をモチーフにした製品「どんざタイル」の製品開発背景をご紹介いたします。
私たちDanto Tile発祥の地である淡路島の伝統と、それを現在に活かしたものづくりへの取り組みも併せてお届けいたします。
どんざとは?
昔の漁師の仕事着である「どんざ」は、木綿を藍染しその上に刺し子を施した衣服です。
木綿布を3枚重ねて刺し縫いしているので、分厚く丈夫で耐久性があり保湿性にも優れています。
刺し子の模様が特徴で、模様によって様々な願いが込められています。
「どんざタイル」
戦前、ダントーでは数多くのマジョリカタイルを製造し、国内外に販売していました。
そのマジョリカタイルの製造技術を活かし、現代の和モダン建築にマッチするよう、色や意匠を一からデザインし完成したのが「どんざタイル」です。
一針ごと忠実に再現した刺し子模様の金型は、どんざのもつ手作りのぬくもりを余すことなく表現しています。
刺し子の模様
どんざの特徴である刺し子は、衣服を長持ちさせる為の補強の役割から始まり、次第にさまざまな模様を表現するようになりました。
柿の花、麻の葉などの模様は、豊穣、生長、長寿を祈る、魔を払うなどの意味をもつとされました。
家族への願いや将来への希望は、今も昔も変わることはありません。
どんざタイルは、大切な家族への祈りを込めたタイルです。
■杉刺:雄大な愛を意味する刺し子。家庭に多くの愛やいつくしみを願う。
■花菱:富みや成功、和解といった意味を持つ。
■柿の花:五穀豊穣や豊作という願いから、多くの恵みを込めた願いがある。
■花文:子宝や子孫繁栄、人間関係の円満を意味する。
施工事例
JF兵庫漁連様の「漁縁パートナー」の取り組みに賛同し、微力ながら活動に協力いたしました。
店舗のコンセプトにマッチした「どんざタイル」をレジカウンターにご使用いただき、店舗の雰囲気に溶け込みながらも、独特の存在感を放っています。
物件名 | 漁連の魚屋加古川店(JF兵庫漁連) インスタグラム https://www.instagram.com/sakanaya_hyogo/ |
所在地 | 兵庫県加古川市別府町緑町2 アリオ加古川内 |
設計 | 株式会社スペース https://www.space-tokyo.co.jp/ |
「どんざタイル」開発のお話
どんざタイルの開発には染色作家の山下絵里さんにプロデューサーとしてご参加頂いています。
山下さんは初めてどんざを見た時にとても感動され、この良さを色々な人に知って欲しいと思い、多くの方々にどんざの良さをご紹介しているうちにDantoTileと出会い、後のどんざタイル開発のきっかけとなりました。
プロデューサーのご紹介 : 染色作家 山下絵里さん 1975年 淡路島に生まれる。 2000年 倉敷本染手織研究所で染職を学ぶ。 2002年 沖縄・宮古島で宮古上布作家・仲宗根みちこ氏に師事。 2005年 淡路島に戻り「織工房いついろ」を始める。
ちょうどその頃DantoTileでは、製品開発の際にただタイルを作るだけでなく、「ストーリーや背景のある製品作り」をテーマとしており、またマジョリカタイルの復刻も検討していました。
そんな偶然が重なり「どんざタイル」は生まれました。
開発担当者は開発の際、単なる建築材料ではないタイルの良さ、淡路島の良さを皆様に知っていただきたいという思いから、本来外注製作する試作金型を自らの手で作りました。
通常は機械で試作型を作るのですが、それでは手作り感が損なわれてしまうため、「一針一針」の刺し子と同じ様に、「一柄一柄」模様を刻み込み、その試作金型をそのまま本金型で再現する、というこだわりをもって作ったそうです。
「どんざタイル」は、ものづくりへの思い、淡路島の伝統、偶然の出会いが重なって生まれた製品です。これからも背景にストーリーのあるものづくりを続け、皆様にお届けしていきたいと思います。
参考リンク
●2021/9/21 神戸新聞NEXT
漁師愛用の伝統着「どんざ」に魅せられてデザイナーが現代風にアレンジ