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建物の長寿命化における外装タイルの役割

タイル研究室

はじめに

日本ではSDGsが社会に幅広く浸透し始めていますが、建築業界においても施工会社・建材メーカーにはそれぞれの役割の中でサステナブルをキーワードにした施工の検討や、商品開発を進めている企業も少なくないようです。

建物におけるサステナブルに対する一つの考え方として「建物の長寿命化」があります。

現在の所、既存建物の耐久性を高める長寿命化改修がメインと思われますが、これから計画される新築物件でも長期の利用を見据えた設計が望ましいのではないでしょうか。

その中でも特にこれから計画される建物に対して、私たちが取り扱っている「タイル」も何らかの形で役割を果たすことが出来ないかと考えています。

今回はサステナブルの観点で、建物の長寿命化を独自の視点で考察していきます。

「建物の長寿命化」のメリット 環境的観点と経済的観点

環境的観点

長期にわたり建物を維持するということは、経年やその他外的要因による建物各部の傷みを定期的にメンテナンスして正常な状態に維持する必要があります。

当然使用する建材・設備が頑丈で傷みにくいものであればあるほど、メンテナンスの機会は少なく済むことになります。

メンテナンスが多いほど、必要な人や建材を移動する為に車両を使用することになり、CO₂が排出されエネルギーや資源が消費されることになります。

経済的観点

経済的観点ではコストに注目してみましょう。

メンテナンスは規模の大小に関わらずコストが発生します。

建物は安全性の確保・維持が最優先である為、不具合の生じた箇所へのメンテナンスは必須となります。

建物の長寿命を図る前提では、イニシャルコストだけでなくランニングコストも考慮したトータルでの試算をすることもポイントの1つになります。

品番:CL-20/ボーダ-

タイルの高い耐久性と躯体保護効果

経年劣化の少ないタイルで外装を覆うことにより、建物の美観が維持できるだけでなく、鉄筋コンクリート造の建物であれば躯体のコンクリート中性化を抑制する効果もあります。

タイルの躯体保護効果「コンクリート中性化の抑制」

通常、ph12~13の強アルカリ性のコンクリートですが、空気中の二酸化炭素がコンクリート表面に接触、水酸化カルシウム等のセメント水和物と化学反応を起こし炭酸カルシウムと水へと変化することで、コンクリートのアルカリ性が低下し「中性化」が起こります。

コンクリートの中性化は空気中の二酸化炭素が浸入することにより進行しますので、外装をタイルで覆うことによって躯体コンクリートの中性化を抑制することが出来ます。

コンクリートの中性化が起こるとどうなるか

コンクリートが強アルカリの状態では、鉄筋コンクリートの中の「鉄筋」表面に薄い酸化被膜(不動態被膜)が形成されることで、腐食速度が抑えられています。

これが中性化によりアルカリ性が低下すると、不動態被膜が破壊され腐食が進行し、腐食の箇所の膨張圧によるコンクリ―トのひび割れに繋がります。

結果として建物の耐久力を低下させてしまいます。

*但しタイル張りによるコンクリート中性化抑制には、張付け材や目地の扱いで異なるという研究結果が出ています。タイル張りにすることによって一定の効果があるとご理解ください。

建物の長寿命化におけるタイルの役割とは

タイルは耐久性が高く経年劣化が少ないという点で、時間が経過しても美観を長期的に維持することが出来ます。

建物の定期的なメンテナンスは前述したようにコスト面での負担が大きく、エネルギーを消費する上、廃棄物やCO₂を発生させてしまいます。

当然のことながら出来る限りメンテナンスが少ない方がこれらの課題解決に近づきます。

タイルの物性上の特徴を活かす為には安全で適正な施工が必要となります。

近年Q-CATと呼ばれる「外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度」が定められ、外装壁タイルの接着剤張り品質及び施工における一つの基準となっています。

外壁タイルにも定期的な点検が義務付けられています。(建築基準法第12条)

「特定建築物」を対象として、乾式工法を除くタイル外壁は施工法に関係なく、竣工3年ごとに目視と部分打診検査、特に竣工後10年毎には「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」に関して全面打診検査を行うこととされており、建物の所有者・管理者にとっては経済的負担が大きいことが問題視されてきました。

しかし、平成30年5月、国土交通省から技術的助言「建築物の定期調査報告における外壁の外装仕上げ等の調査方法について」が発出され、 所定の条件を満たした接着剤張り外壁であれば、全面打診検査の代わりに各階1箇所以上の引張り接着試験による確認方法でも差し支えないこととなりました。

これにより定期点検での経済的負担が軽減されたことは、外壁タイル張りを検討する上で大きな前進であると考えています。

(特定建築物:学校、体育館、病院、共同住宅など。地域により対象となる用途と規模が異なります)

まとめ

今回のタイル研究室では『建物の長寿命化というテーマに対してタイルで何か貢献できないか』という観点から考察しました。

建物の長寿命化という概念は、基本的に今ある建物の長寿命化を対象にしているように考えがちですが、これから建つ建物に対しても予め長寿命を念頭に計画することで、サステナブルな社会の実現に近づくのではないでしょうか。

多くの課題は有りますが、外観に関してはタイルで出来ることがまだ沢山あるのではないかと考えています。

*当考察には個人的な見解も含まれておりますので予めご了承ください。

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